昨日の記事PHPMailerの脆弱性CVE-2016-10033について解析したにて、PHPMailerの脆弱性CVE-2016-10033の原因はmail関数が内部で呼んでいるescapeshellcmd関数の仕様が原因であると指摘しました。そして、mail関数の危険性については、小邨孝明さんが2013年12月23日の記事にて指摘していました。
私は、CVE-2016-10033の主原因はPHPMailerというよりもPHPのmail関数側にあると考えていましたが、上記のようにマニュアル上で「免責」されていたことになります。
それでは、いつごろこの注意書きが追加されたのだろうとarchive.orgで確認したところ、下記のような結果でした。
mb_send_mail関数(mail関数も同様)ですが、第5引数(additional_parameter)にユーザの入力を使用する場合は注意が必要です。mb_send_mail関数の第5引数は、内部でescapeshellcmd(内部関数名:php_escape_shell_cmd)によって引数の文字列全体がエスケープされます。私はこの記事が書かれて直ぐに読んでいましたが、残念ながら多くの方が知るとこではなかったように思います。しかし、今日になって、小邨さんの注意喚起がPHPのマニュアルに追記されていることに気が付きました。
escapeshellcmd() は、以前に徳丸さんから OS コマンドインジェクションの防止には不適切であると指摘されています。ユーザの入力値を十分にチェックしておかないと、sendmailコマンドに任意のコマンドライン引数を渡されてしまうことになります。
mb_send_mail(),mail()で第5引数を設定する際の注意点より引用
additional_parameters
(オプション)パラメータ
additional_parameters
は、 追加のフラグをコマンドラインオプションとしてメール送信プログラムに渡す際に使用可能です。 メール送信プログラムは、設定オプション sendmail_path により設定されます。例えば、 sendmail を使用する際に -f オプションを使って エンベロープの sender アドレスを設定する際に使用できます。このパラメータはコマンドの実行を防止するために内部的に escapeshellcmd() によってエスケープされます。 escapeshellcmd() はコマンドの実行を防止しますが、 別のパラメータを追加することは許してしまいます。セキュリティ上の理由から、 シェルコマンドへの望ましくないパラメータの追加を避けるために、 ユーザーはこのパラメータを適切に処理することが推奨されます。
escapeshellcmd() が自動的に適用されるため、 インターネット RFC でメールアドレスとして許可さているいくつかの文字を使用することができません。 mail() はそうした文字を許可しないため、プログラム中でそうした文字の使用が必須である場合、 メール送信の代替手段(フレームワークやライブラリの使用など)が推奨されます。
それでは、いつごろこの注意書きが追加されたのだろうとarchive.orgで確認したところ、下記のような結果でした。
- 2014年1月6日のアーカイブ(注意書きなし)
- 2014年2月9日のアーカイブ(注意書きあり)
これはこれで立派なことですが、PHP利用者は常にマニュアルの変更を見張っているわけではないので、もう少し注意喚起を工夫できなかっただろうかと感じました。